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活動ブログ
家を温める人の営み
2014-11-13

古民家には訪れる人々を包み込むような温かさがあります。川崎市立日本民家園は、向ヶ丘遊園から徒歩でも行ける生田緑地に静かなたたずまいを見せています。春夏秋冬どの季節に訪れてもいいと思いますが、やはり秋から冬は古民家で炊かれる囲炉裏の炎が合うでしょう。

民家園には25棟の建物があり、そのうち7件が国指定重要文化財であるほかすべての建物が文化財指定を受けています。この民家園の誕生にはドラマがあったと聞きました。この園の開設は昭和42年(1967年)ですが、誕生のきっかけとなったのは、当時川崎市麻生区金程にあった「伊藤家住宅」の保存問題であったといいます。横浜の三渓園に移築が決まっていたこの伊藤家を何とか市内に残そうという運動からこの民家園が生まれたのです。愛知県の「明治村」などと並んで、日本有数の野外博物館のさきがけです。

こうした民家園にはもうひとつ素敵な物語があります。それは、園内の建物で古民家を守っているボランティアグループ「炉端の会」の活動です。毎日、3、4棟ずつ囲炉裏に火をたいて、煙や煤で家を乾燥させ建物を守ってくれているのです。会の皆さんは園内のガイドなどの活動も続け、今年で20年を迎え、私も祝賀会にも参加させていただきました。こうした功績に対して、川崎市文化賞をお贈りすることといたしました。また、民家園には、「民具製作技術保存会」も活動されていて、機織りや竹細工などを見せてくれたり、市民向けの講座を開催しています。

皆さんの活動を拝見して、ハードな文化財である建造物が、人が入って手をかけることによって、初めて豊かな「民家」として生きるのだと納得しました。市民・国民の文化財を、市民の手によって守り生かしていくという「グッド・サイクル」が回っているのです。しかもシニア世代の皆さんが、キラキラ瞳を輝かせ、とても素敵な表情をなさっているのです。ボランティアの皆さんが草で作った「草バッタ」も子どもたちにプレゼントする姿に触れて、「グッド・サイクル」が世代を越えてつながっていくのだと実感しました。

「炉端の会」の皆さんと、囲炉裏を囲んでいたとき、メンバーの方が、「囲炉裏があるから何時間でもいられるんですよ。」と笑顔で言われました。私は、こうした人たちの営みがあるからこそ、この古民家に温もりが生まれ、私たちが温かに癒させるのだと感じました。

11月後半の週末にはライトアップも行われます。おしゃれな大人のデートにも、古民家の温かみはぴったりだと思いますよ。

 

参考文献:東建月報2010年11月号掲載「野外博物館の魅力・第4回川崎市立日本民家園―東日本最大規模の民家博物館」高橋 英久(江戸東京たてもの園・学芸員)

 http://token.or.jp/magazine/e201011.html