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『暁の挑戦』に見る覚悟
2014-12-16

川崎市誕生の翌年、大正14年(1925年)に、「鶴見騒じょう事件」が起きました。この事件を題材に、制作され、1971年に封切られた『暁の挑戦』という映画があります。この映画は、幻の映画といわれていたのですが、昨年フィルムが発見され、市制90周年の今年43年ぶりに上映されることになったのです。

私も封切りの初日にチネ・チッタで観て参りました。実は、前週の敬老訪問の際にお目にかかった、戦時中に市役所勤めていらした佐々木さんをご招待してご一緒に鑑賞させていただきました。

この日の舞台挨拶には主演の若林 豪さんが駆けつけ撮影当時のエピソードなどを披露してくださり、会場を沸かせてくれました。この映画は、川崎商工会議所と川崎市が制作に全面協力し、当時のPR版には、金刺不二太郎市長をはじめ、商工会議所会頭や市議会議員も出演され、昭和の川崎の歴史を知ることができました。

さて、この物語の舞台は、大正14年の川崎市。島田正吾さんが演じる市長が「大工業都市建設計画」を掲げ、工場の誘致や拡張に拍車がかかります。ここに公共工事の利権などを狙って地元の暴力団・酒巻組が暗躍します。なんと渡 哲也さん酒巻組の悪役で登場します。これに対して、正義感に燃えるガラス工場の青年・正岡が若林 豪さん演じる主役です。正岡は工場の拡張を実現するためには、しっかりとした多摩川の河川改修が必要だと知って、これを実現するために土木会社を立ち上げ酒巻組に対抗していきます。工場誘致や市民生活の安全のためにと市役所が発注する多摩川の堤防工事をめぐって、正岡と酒巻組の対立は抜き差しならない状況になっていきます。正岡には仲間の船木役の中村錦之助さんや、市役所職員役の財津一郎さんらが協力していきます。このため、全国から暴力団が応援に駆けつけた酒巻組と、市民や労働者が応援する正岡の会社が激突することになったのです。

手に汗握るストーリー展開の中、市長が、この騒動を収めようと佐藤 慶さん演じる任侠の元締めに酒巻組を説得するように依頼に行きます。しかし、元締めからは仲裁を断られ、「わざわざ市長さんが自分からその騒動に入り込んで、泥をかぶることはない。」「きたないものや嫌なものは直接見たり手を触れたりはしない、それでこそ政治家としての果断な処置が取れる。」と政治観を諭されてしまいます。

いよいよ万事休すです。衝突は避けられなくなり、朝日の昇る中、正岡たちは酒巻組が集結する多摩川の川原に隊列を組んで進んでいきます。そこに、何と市長が現れます。

そして正岡に対して、「きたないことに対して敏感さを失い、それを見逃すようになってしまったら、もうおしまいだ。」「断固として戦うのが僕の役目だ。」と言い放ち、群集の先頭に立って酒巻組に立ち向かうのです。さらに、その川原には、四方からのぼり旗を掲げた老若男女の大勢の市民が押し寄せてくるではありませんか。

最後は市民総出の隊列に、暴力団の酒巻組は降参せざるをえなくなったのです。

この映画は、実際の事件をモチーフにしたフィクションですが、それでも、自分たちのまちのために立ち上がる市民たちの結束や、市長の正義感あふれる言葉には感動しました。