秋の青空をバックに柿の実が輝いている風景は、日本の里の原風景のひとつだと思います。
川崎には、「柿生」という地名・駅名があります。実は、本物の柿のふるさとなのです。日本で最も古いといわれる甘柿「禅寺丸柿」の発祥の地です。なんと「禅寺丸柿」の発見は、1214年、今から800年前にさかのぼります。等海上人というお坊さんが、今も地名としても残っている「王禅寺」の寺の裏山で発見したと伝えられています。こうしたことから、江戸時代には、徳川家康から「王禅寺丸柿」と名づけられたともいいます。
今では、次郎柿や富有柿が主流ですが、江戸時代から明治・大正時代頃は、「禅寺丸柿」が柿の王様として市場を占めていたのです。昭和30年代までは、小田急線の柿生駅から、箱詰めにされた「禅寺丸柿」が全国に出荷されていました。
しかも、名誉なことに明治天皇にも献上され、現在では、皇居東御苑にも植樹されています。さらに「禅寺丸柿」の木は、その原木を含めて7本が、国の指定登録記念物にも指定されているのです。
歴史だけがすごいというのではありません。実は、1995年(平成7年)に、「禅寺丸柿」を保存する運動を進める「柿生禅寺丸柿保存界」が結成され、植樹活動を進めています。さらに、その後「かわさき柿ワイン・禅寺丸」が開発され、地域のブランドになっています。
2012年には、「禅寺丸柿サミット」を開き、開催日の10月21日を「禅寺丸柿の日」に制定して、秋は、ゆるキャラの「かきまる」くんも登場する、さまざまなイベントを展開するようになっているのです。
この季節でなければ味わえない「禅寺丸柿」、数量限定なので、見つけたときにはすぐに求めておいてくださいね。
甘さたっぷりの柿を食べていただき、800年の歴史のロマンを感じてみてください。
参考文献:『柿生の里 禅寺丸柿』(麻生観光協会編集、麻生区役所発行)